誰もが健康で居心地よくくらせるまちづくりを目指して
左から 代表理事専務理事 黒子 和彦さん 組織部部長 高橋 聡さん 組織部課長 石塚 佳央理さん
1964年に設立され、57年目を迎える医療生活協同組合やまがた。 新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、地域の組合員さんのつながりを保つための活動についてお話を伺いました。
患者の立場に立った医療機関を
今から約58年前、酒田にあった本間診療所(現在の本間病院)に「患者さんの立場に立った診療ができる医療機関を作りたい」と考えた医師がいらっしゃいました。
このことに共感した、その後二代目理事長となる鈴木氏の熱い想いから、この鶴岡にもそんな医療機関を作ろうと話が持ち上がったのが始まりでした。
本間診療所からの協力を得ながら、どのような医療機関を作っていくかという話し合いの中で、自分たちの声が反映される組織を作るには医療生協という組合の形に則した医療機関を作っていくのが良いということになったのです。
かつて、医師は患者さんから「お医者様」と呼ばれ、病院や医師には亡くなった際の死亡診断でしか関わらないくらいに敷居が高い存在でした。
そんな時代を経て、患者さんが医療機関にかかった際に率直に自分の想いを医師に伝えられる、対等な医療を提供して、本当の意味で患者さんの立場に立ち、患者さんの想いを聞き、診てもらいたいときに診てくれる医療機関がほしいという熱い想いがありました。
そのためには、医療生協という「組合員さんがいて、組合員さん自らが出資をしたり運営に関わったり、利用できる立場がある組織」として作ることが、求められる組織になるのではとすすめてきました。
医療生協の誕生
医療生協の立ち上げが一気に進んだきっかけとなる出来事があります。以前から続いていた当時の本間診療所との協力の中で、前述のような医療機関を鶴岡にも作りたいと話を進めている最中の昭和39年に新潟地震があったのです。鶴岡でも当時の鶴岡生協(現在の共立社)の建物などにもかなりの被害があり、「全日本民主医療機関連合会」の組織から地域への支援が入りました。
「自分たちのことだけでなく、他の地域にも支援を行う全国組織があるのは素晴らしい」と多くの声が上がり、法人としては「医療生協」として立ち上げることとし、さらに「全国に支援を行う医療機関にもなりたい」と、設立と同時に「全日本民主医療機関連合会」にも加盟しました。
その後、診療所の常勤医が不在になった際にも、全日本民医連に加盟している病院から医師の派遣をしていただいたり、東北大学から派遣をいただけたことで、無事に診療所を継続することができました。
その後、双葉町に鶴岡協立病院の建設を目的として、「鶴岡協立診療所」がオープンしました。おかげさまで、診療所の病床が常に満床であったことや、患者さんのリハビリが求められたこともあり、佐藤満雄医師(現名誉理事長)が宮城の病院を退職して地元に戻り、常勤医として着任したことで、その後の常勤医の確保も順調に行われ、増床や建物の拡大を行い、1974年に現在の「鶴岡協立病院」と名称を改めて再スタートを切りました。
印象に残った医療生協組合員活動
黒子さん
1993年8月の三川診療所開設に関するエピソードは印象に残っています。三川町の組合員さんから「自転車で通えるところに診療所が欲しい」という声が上がり開設に至ったものですが、地元の組合員さんが仲間増やしや出資金増強などの組織建設に大きな力を発揮し、実現することができたのです。
私が入職する前の話ですが、三川診療所に関わる組合員活動の話は今でも様々な場面で話題に上がっています。医療生協という組織の強さや優位点、それに応える組織の心構えというのが語り継がれているのです。
高橋さん
私の中で印象に残っていることは、医療生協やまがたの設立50周年に組合員さんが4万人を越えたことですね。
それまでは3万8千人で推移してきた組合員組織なのですが、「2014年の50周年を契機に組合員4万人を目指そう」という思いが高まり、組合員さん・職員の力を合わせることで1年間で組合員が4万人になりました。
この活動は、医療生協の職員が活動を先導したというわけではなく、組合員さんたち自身が「組合員4万人で50周年を迎えたい」と率先して活動してくれたんです。
職員と組合員さん、組織全体でできる活動を色々行うことで、組合員4万人で50周年を迎えることができました。
今後の組合員活動
もちろん、組合員さんを増やさなければいけないということはありますが、人口そのものが減っている中で数だけの拡大をするのではなく、健康づくり活動の質を高めていかなければいけないと思っています。
また、医療生協に関わってもらえる「若い世代」をどのように増やしていかなければならないか、という点も考えています。出資をしていただくだけでなく、医療生協の運営に関わっていただき、利用して主体的に関わってもらえる組合員さんをどのようにして増やせるかというのも課題の一つです。
また、医療生協という組織上、高齢の方には興味を持っていただけるのですが、若い方に興味を持っていただきづらいところがあるので、今までの高齢の方向けの施策以外にも、お子さんのいる方や若い方にも興味関心を持っていただけるような組合員活動を提供できるように試行錯誤したり、若い層に向けた働きかけができるWebやSNSでの活動展開も考えています。
今ですとコロナ禍ということもあり、なかなか外に出ることができない中で、家にいながら組合員の皆様と関わることができる環境があれば良いなとも思っています。
高齢の方々にも、運動不足などでフレイルになってしまわないように、医療生協から提供できるものは何かを考え、皆様が健康を維持できるようなツールを提供していかなければならない時代ですね。
コロナ禍の組合員活動・働きかけ
高橋さん
医療生協やまがたでは、新型コロナウイルス感染症の影響で2020年3月30日から6月30日まで、組合員活動を中止していました。
その間、5月から「組合員さんがどのような状況であるか」を確認するための組合員訪問を行い、運動不足や精神面でのリフレッシュが難しい中で身体が弱くならないように運動用のDVDや冊子を配布してきました。
人とのつながりということで「交換日記をしてみませんか」ということになって三つの支部で交換日記を行い、メンバーが日記を交換することでつながりを保つという取り組みもしていました。
他にも、組合員の皆様からは病院で使用する布マスクを作っていただきました。特に医療施設内でもマスク不足が起きてきた中で、手作りの布マスクを930枚ほど提供していただきました。
黒子さん
コロナ禍で学校が急に休校になったことがありましたね。
そのような学校閉鎖時に、医療生協の職員も「子どもを預ける場所がない」と非常に困っていたんです。
どうしても仕事を休めない職員の代わりに、医療生協やまがたの施設を利用して、組合員さんが職員のお子さんの面倒を見てくれたこともあります。
高橋さん
コロナ禍における組合員さんの意識調査の中で「集まる場所がなくなってしまった」「いつもの組合員活動が行えず、積極的にコミュニケーションが取れないので、ストレスが溜まる」という声があり、どのようにつながりの場を持つかという中で医療生協やまがたでは、あくまでも一つの手段に過ぎないのですがSNSの運用をすることにしました。
6月から組合員活動が再開しましたが、その中「オンラインサークルを作ろう」という話になり、オンラインでのサークル活動へ徐々にシフトできるように活動を進めています。
石塚さん
オンラインサークル立ち上げ当初は、なかなか人が集まらなくて大変でした。
オンラインサークルの対象としている方が70〜80代の方ということもあり、「そもそも、デジタルデバイスを持ってない」「私には無理だ」ということで、オンラインサークルを立ち上げる前から「難しそう」という声がありました。そのため、最初はオンラインサークルの体験会も行ったのですが、時期的にも大勢を受け入れられるわけでも無いのでほとんど人が集まりませんでした。
体験会では、組合員さんから実際にZoomを使用して「どのようにオンラインでおしゃべりができるか」というのを体験していただき、そこでの体験をきっかけにオンラインサークルへ加入してもらっていました。
高橋さん
最近では、全体でようやく20人ほどが参加されるようになってきました。2月にもオンラインサークルを開いたのですが、10人中8人が自宅から自分でZoomをつなげて参加してくれました。体験会も行っていますが、どうしてもマンツーマンで教えないと難しいこともあり、大勢を受け入れることも出来ないので少しずつ増やしていっています。
デバイスを持っているかどうかというアンケートを実施し、100人にご協力いただいて、実際に持っている方は40人というデータが出ています。
そんな中で、「自分もスマホを買ったよ!」という連絡をくださった組合員さんがいらっしゃったんです。
デバイスなんて全く触れない、という方が初めはたくさんいましたが、少しずつ触れるようになる方が増えてきており、そのような中でオンライン上でつながりたいという人もいることがわかってきました。
ただし、デバイスを利用できない方々の事も考えていかなければいけないと思っています。
黒子さん
コロナ禍で、人とのつながりを欲している方が多かったように感じます。そうした中で、私が「すごいな」と感じたのは、今まで地域での活動を運営していた組合員さんから「活動に参加していた人は元気なのか心配」「一緒に活動していた人はどうしているんだろう」という声が上がったことです。
医療生協の職員が「患者さんや地域の方々のために」と活動するのとは違い、組合員さん同士で他の組合員さんの事を思いやっていただけたり、自主的に電話をかけて健康かどうかを確かめ合ったりする姿を見て私たちの組織を誇りに思いました。
組織部の中でも、会うことができない組合員さんに電話連絡をして様子を尋ねたりしていますが、地域の中でもそういう動きがあるので「組合員組織のつながりって大きいんだな」と改めて感じる部分でした。
高橋さん
現在はWebexを使ってオンラインで体操をしているんです。 例えば、リハビリ病院の職員はコロナ禍によって地域活動を制限しているので、職員と組合員さんをオンラインで結んで体操の指導していただいています。
オンラインでの交流については、組織部の職員が各支部に赴いて設備をセッティングして、支部毎にオンライン上でつなげて交流できるようにしています。
「全くオンライン交流ができない」という方が、このような場でオンライン交流に触れて、今後は自発的にオンラインでの交流を行っていただけるようになると良いと思っています。
石塚さん
組織部では「スマートフォン講習会」も行っています。
Zoomを利用したオンライン体験会をする中で、組合員さんに「デバイスの使い方がわからない」と困っている方が多くいたので、体験会の前に使い方を教えてあげたほうが良いということになり、スマートフォン講習会を行うことにしたのです。
班単位・支部単位で、組織担当者が一人一人に丁寧に教えながら使い方を覚えてもらっています。
地域の方々へのメッセージ
医療生協は1964年の設立から57年目を迎えますが、地域の組合員さんたちと共に作り上げてきた組織です。
ただ、地域の方の中には「組合員さんでないと関わることができない」というイメージを持たれている方も多いのかなと思っています。
例えば購買生協ならスーパーと同じように考えられる方がいると思うのですけれど、医療生協だと「つながりに入るのはハードルが高い」ということも全くありません。医療生協は「地域まるごと健康づくり」という目標を掲げて活動している組織ですので、組合員さんのためだけでなく地域全体のまちづくりを考えて行動しているんです。
困ったことがあったり、心配事があったり、どこに相談していいかわからないという際の駆け込み寺のような「医療生協に相談すれば色々なことを教えてくれる・受け入れてもらえる」ということや、事業所に来なくても地域に「支部」があって、そこに相談できるような組合員さんもいるということ、そういったことができる組織なんだということを、医療生協を知らない方にも知っていただきたいです。
医療・介護従事者である職員の関わりや大人数が集まる活動を制限せざるを得ない今だからこそ、自分のやりがいや経験を生かして力を発揮する場所が一番身近な住んでいる地域の中にあることを、実際に組合員さんとして活動している方と共有しながら、医療生協の「強み」を最大限生かした取り組みを続けていけたらと思います。
組織沿革
1964年 庄内医療生活協同組合 設立
1965年 人見協立診療所 開設
生協設立の許可を受け、人見協立診療所の名称を庄内医療生活協同組合鶴岡診療所と改称
1966年 山形県民主医療機関連合会 結成
1973年 鶴岡市双葉町に庄内医療生協鶴岡協立診療所 設立
1974年 鶴岡協立診療所が増床、鶴岡協立病院へ名称変更
1979年 大山診療所 開設
1984年 鶴岡協立病院を協立双葉病院へ名称変更
新たに文園町で鶴岡協立病院を開設
新大山診療所(協立大山診療所) 開設
1993年 協立三川診療所 開設
1996年 協立双葉病院を鶴岡協立リハビリテーション病院に名称変更
1999年 協立慢性疾患クリニック 開設
2000年 協立歯科クリニック 開設
デイサービス協立 開設
居住介護支援事業所 開設
2001年 協立リハビリテーション病院 開設
総合介護センターふたば 開設
2003年 鶴岡協立病院附属クリニック 開設
2005年 ケアプラン大山 開設
2006年 サポートセンター三川(デイサービス・有老ホーム) 開設
2007年 ケアプランセンターふたば・あおば 開設
小規模多機能型居宅介護事業所かがやき 開設
サポートセンターあさひ 開設
2012年 介護療養型老人保健施設せせらぎ 開設
2017年 グループホーム和楽居 開設
やまがた保健生活協同組合と組織統合
医療生活協同組合やまがたへ改称
2018年 小規模多機能施設くしびき 開設
Information
医療生活協同組合やまがた
鶴岡市双葉町13-45
TEL:0235-23-1316(代表) FAX:0235-24-4310